具楽主宰、早坂具美子に訊いた仕事の魅力、これからの具楽。
「自分だけでなく、周りの人もみんな楽しくて、幸せであること」

とにかく「人をもてなす」ことが大好き

─早坂先生がこの仕事を選んだ理由は何ですか。
元を辿ると食器集めが大好きだったんです。
旧石器時代にも興味があって、遺跡の発掘調査のアルバイトをしていたんですが、そこで仲良くなった女性に ホームパーティーへ招かれまして、その時の「おもてなし」が素晴らしかったんです。 当時は大変刺激を受けましたね。テーブルコーディネートも器もちょっとした料理も本当に素敵で、尚且つ完璧。 で、彼女の影響もありつつ、欲望の赴くままに食器を買い込んでいたらどんどん増えてしまい、 主人に「中に入れるモノの方が大事だろ」って言われて、 そりゃそうだ、ということで料理を本格的に勉強し始めたんですね。

もちろん「食べることが大好き」ということとプラス「人が好き」ということが大きいです。 旅先で美味しいものに出会ったら、「ん!?これ美味しい!マネして自分で作ってみよう」 「この美味しい食べ物をみんなに知らせたい!」って思う気持ちが人一倍強いです。それでみんなと楽しみたい、 楽しいことを共有したい。私とにかく「人をもてなす」ことが大好きなんです。人が来たら「何をしてあげようかな」、 「こうしたら喜ぶかな、驚くかな」ってあれこれ考えるのは楽しいですね。
─この仕事の一番の魅力、面白いところはどんなところですか?
やっぱり、みんなが喜んでくれること。笑顔です。笑顔。単純に料理の作り方だけ分かればいいってことじゃなくて、 その料理によってみんなが笑顔になることが大切ですよね。 その料理を各家庭でも作ってご家族も笑顔になれるなんて幸せじゃないですか!
─だから数カ月先まで料理教室を予約していくんでしょうね。
そうですね。料理教室だけでなく、企業様も年間契約で数カ月先までスケジュールが埋まっています。 本当にありがたい事です。

「ファン」を超えて「ファミリー」に

─私も先生と長いことお付き合いさせて頂いて、先生と繋がっていたい、という「ファン」が多いことを感じています。
そうですね。もう「ファン」を超えて「ファミリー」です。だからこそ、私も出し惜しみせず、 知っていることは全て伝えたいと思っています。切っても切れない「家族」ですから。みんなうまくいって欲しいじゃないですか。
─長くこの仕事をしていると大変なこともあったと思いますが、それでも頑張って続けてこられたのはなぜですか?
私あまりピンチを感じないんですよね(笑)。というか、ピンチは最大のチャンスなんです。 ピンチがあっても必ず誰かが助けてくれて、もっと大きく成長させてくれるんです。
─と言っても大変なことはあったと思いますけどね。持ち前のポジティブ思考で乗り切ったんでしょうか。
あ、でも小さな失敗はいっぱいあります(笑)。失敗はいっぱいあるけど、なんとかなるんですよね。 結局クライアントにさほど大きな迷惑をかけたことは無いのですが、その分スタッフには多大なる迷惑をかけてきたと思います。 私、忘れっぽいし。オーバーブッキングもあるし。その度にみんなにフォローしてもらって…。

仲間との間で大切にしていることは「思いやり」

─先生に影響を与えた「人」や、「言葉」を教えてください。
栗原はるみさんです。先生の料理教室に通っていたんですが、彼女の料理は、本当に簡単に作りやすくて、 それでいて見栄えも良くて、器の使い方もすごくセンスが良くて、何よりも先生の人柄が素敵なんですよ。 「ごちそうさまが、ききたくて。」ていう栗原はるみさんの本を是非ご覧になってみてください。
佐藤こうぞう先生はまた別のやり方で厳しかったですが、いい勉強になりました。 それから豊村薫先生からも影響を受け、「新しい中華」を習得しました。三人のいいとこ取りをして今の私がいます。
─先生が仲間との間で大切にしていることは何ですか?
「思いやり」。何度も言いますが「家族」ですから。
─今後状況が変わったとしても絶対に変えたくないことは何ですか?
やっぱり「具楽」ですから、自分だけでなく、周りの人もみんな「楽しくて、幸せであること」。 あとは何歳になっても「新しいもの」を伝えていきたい。そして「手軽に簡単な、楽(らく)できる料理」。 これは料理教室でも、企業のレシピ開発でもこだわっていきたいです。

「チーム具楽」だからできること

─既存客はなぜ数ある料理教室の中で「具楽」を選んだと思いますか。
料理だけでなく「器」「テーブルコーディネート」など空間づくりにもこだわっているので楽しいと思います。 その割に料金もリーズナブルだと思います。
─どのように顧客を獲得してきましたか?
口コミ、紹介、ホームページです。広告はしていません。
─他とは違う「具楽」の強みは何ですか。
フードコーディネーターって普通一人で活動しているんですが、うちは「チーム具楽」なので。 30~60代のいろんな世代の女性の集団なのでそこは強いです。

一度関わったからにはとことん世話を焼く。
東北の仕事は私たち「チーム具楽」が担っていきたい

─今後の活動にかける意気込み、計画などを教えてください。
私はフードコーディネーターなんていう「存在」が浸透していない20年も前から、宮城でやってきたわけですが、 今ありがたいことに若手がどんどん育っています。 ですので東北の仕事は地元の食材、調理方法、料理を知り尽くした私たちに任せていただきたい。 東京のほうからやってきた「有名人」ではなく、私たちに。様々なニーズに応えられる「チーム具楽」が担っていきたいんです。 そうでなければいけないと思っています。

それから、地方の中小企業は社内に専門の開発チームがあるわけではなく、社長とその奥さんだったり親子だったり、 家族で切り盛りしているケースが多く、ちゃんとしたテストキッチンもないわけですね。 尚且つ作った商品の検証も不十分なまま世に出してしまって、商品が思うようには売れず失敗したりしているのが現状なんです。 しかも莫大なお金をかけてしまっている…全然美味しくないのにすごく立派なパッケージを作っちゃったり…。

私たちは、そういった地方の企業の開発チーム、テストキッチンでありたいと思っています。 私の性分からして一度関わったからにはとことん世話を焼きますよ。実際今まで商品開発で関わった企業様に、 取引先となるお客さんまで紹介しちゃったりするんですから(笑)。 だってせっかく作ったからには上手くいってほしいですものね。
あと、これからは20年前にはなかった「インバウンド」から生まれるニーズに積極的に答えていきたいです。 宮城にやってくる外国人の皆さんに「東北の食材」や「調理方法」「お料理」を伝えたり、 逆に私たちが出掛けて「食」の異文化交流の懸け橋になったら面白いですね。

先日御縁があって、台湾と仙台の交流企画で台湾に行き、料理教室をしてきました。 現地の皆さんが親切で笑顔で私も楽しかったですし、とても喜んでいただけました。
─因みに先生が子供の頃、何が一番楽しかったですか?そしてどんな家庭でしたか?
家の中より外でみんなとワイワイ遊ぶのが好きで毎日野山を駆け巡ってました。
親に頼んでわざわざお弁当を作ってもらい、外でピクニックごっこみたいなこともやってましたね。

それから、伯父が船乗りだったので小さい頃から外国の食べ物や飲み物に親しんでいました。 他の家とは明らかに食べるものは違っていたかもしれません。 母親も料理好きで創作料理が得意で美味しかったですよ。 人を呼んで自分が作った料理をふるまったりすることが好きな母でしょっちゅう家で食事会みたいなことをしていました。 私はそんな母親の影響も受けたのかもしれませんね。